仕濾過事ろかじにつかふる」の精神を貫き、
新たな時代を切り開いてまいります。


代表取締役 社長執行役員 山崎 敦彦     取締役 副社長執行役員 山崎 裕明

 

フィルタビジネスを通じて社会に貢献するという創業以来、貫き続けてきた想いは、現代においても変わることがありません。深刻化・複雑化し続けている社会課題を解決していくには、これまで以上の困難が伴うことが明白です。私たちヤマシンフィルタグループは、全社一丸となりこの難局に立ち向かい、持続可能な未来を創造してまいります。

 

サステナビリティの源泉である社是「仕濾過事」

社長:当社は創業当初から「仕濾過事」を社是に掲げ、半世紀以上にわたってフィルタビジネスを牽引してきました。この社是が生まれた高度経済成長期初頭に思いを馳せますと、パイプラインの敷設を担った厳寒のシベリアで幾多のトラブルに見舞われながら、寝食も忘れて開発に没頭し、ネックとなっていた建設機械の油圧フィルタの耐寒性を克服した先人のフィルタ作りへの思いに背筋を伸ばさずにはおれません。高いハードルを越える過程で考案されたこの言葉には、フィルタ作りを通して社会と関わり、社会に貢献しようという強い想いが込められており、「フィルタビジネスを通じて社会に貢献する」というサステナビリティの精神そのものです。

 

副社長:この理念は、世の中に貢献する事業への期待が高まっている現代にも合致しています。お客様を筆頭に、株主、従業員、環境と、ステークホルダーが多岐にわたる時代となりましたが、製品を通してあらゆるステークホルダーの役に立ちたいという姿勢はいまなお変わりません。

 

社長:当社が、主力製品である建機用の油圧フィルタの可能性を広げ、エアフィルタを手掛ける株式会社アクシーを完全子会社化したのも、当社の技術力を活かして社会貢献の幅を拡げていきたいという想いからです。近年、新興国をはじめ世界のいたるところでPM2.5などに起因する大気汚染が深刻化しています。エアフィルタは、病院や学校など建造物の空気を浄化し、そこで暮らし活動する人々の健康向上を後押しします。フィルタのろ材から開発・製造するヤマシンならではの強みをもって製品の性能向上を図りながら、理念を具現化していきます。

 

多様な環境課題に対する企業としての姿勢

副社長:気候変動や大気汚染をはじめとした環境問題は、いまや全人類にとっての課題です。それは、豪雨などによる激甚災害が頻発しているように、日常生活の中でも実感せざるをえない深刻なレベルです。地球の未来を揺るがしかねないこの問題に、私たちは「地球人」として真摯に取り組んでいかねばなりません。企業としては、まず製品をよりサステナブルに、第二に製品を通じてお客様の事業をサステナブルに、第三にサプライチェーンをサステナブルにしていくことが肝要です。こうした対応をしていない企業は、淘汰されていくでしょう。2022年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言」への賛同を表明したのは、カーボンニュートラル達成への貢献に向けた決意の表れです。

 

社長:フィルタは使い終わると廃棄物となり、その焼却処理工程ではCO₂が排出されます。そこで、当社は1990年代に従来の紙から、ろ材をより目が細かく通過抵抗の低いガラス繊維へと転換し、ろ過性能の向上のみならず小型化と製品ライフサイクル延伸を図りました。その結果、廃棄量は4分の1になり、焼却に伴うCO₂排出量の大幅削減も可能にしました。それから30余年が経過した現在、次世代のろ材としてより高性能で環境にも優しいナノファイバーろ材「YAMASHIN NANO FILTER®」を展開し、さらなるCO₂排出抑制につなげています。
製造工程においては、佐賀事業所で2023年度に抄紙ラインで使用する水の100%リサイクル化を達成 したほか、2024年からは、熱に拠らない速硬化性のある溶剤への切り替えにより、工場内の温度上昇を抑え、空調に費やす電力の節約とそれに伴うCO₂排出量の削減を図る予定です。
この新たな溶剤は、CO₂排出量削減のみにとどまらず、年間を通じて気温が高い南国の工場において、 更なる高温下での作業が必要であったところを、作業環境も大きく改善できるというメリットがあります。
このように、当社は製品そのものだけでなく、現場の作業環境の改善にも注力し、コストを抑えながら環 境負荷低減に挑んでいます。相反するように思われがちなコストと環境配慮の両立は可能です。
性能の向上と併せ、よりクリーンかつロングライフで環境に優しい製品・製法を引き続き追求していきます。

 

サプライヤーとの協働を通じたサステナブルなサプライチェーンの構築

副社長:そうした事業活動を安定的に継続していくには、サステナブルなサプライチェーンの構築が不可欠です。グローバルに事業展開する当社は、拠点を置く地域社会への貢献も重視し、地産地消による地域還元を心掛けています。

 

社長:2021年にBCPの観点からベトナム・ハノイに新設した工場はその代表例で、製品品質の向上と併せて現地調達を進めています。ハノイには部品メーカーが多く、いまでは調達の大半を現地で賄い地域の雇用促進に寄与しています。

 

副社長:元々ベトナムは競争力のあるサプライヤーが多いという特徴があります。外国、特に新興国では労働環境や児童労働など相対的に人権リスクが高いと認識していますが、近年ベトナムは成長を遂げており、実際には人権面でのリスクも低減していると思います。当然、厳しいチェックは必須となりますが、話し合いを重ねることで問題を解決できるケースが多々あります。リスクを見越して取引しない、という選択をするのではなく、パートナーと共に課題を解決できる方法を模索するなど、互いに良い方向を目指すという姿勢で、競争力の高い優れたサプライヤーとの信頼関係構築に努めるという方針を貫いていく考えです。例年実施しているパートナーズミーティングなども活用しながら、人権に対する意識醸成や取り組みをサプライヤーとともに強化し、サプライチェーン全体の底上げに尽力してまいります。

 

企業の総合力向上につながる職場環境の整備

社長:企業としての総合力向上の取り組みの一環として、職場環境の整備にも注力しています。当社ではコロナ禍を契機に時差出勤やリモートワークが定着し、現在も本社では出社率約50%を維持しています。こうした制度は、仕事と育児・介護の両立を可能にし、従業員が活躍し続けられる職場づくりという重要な課題に寄与するものです。一方で、100%リモートワークとなるとチームワークの形成に障壁が生じやすく、Face to Faceのコミュニケーションの中から生まれるアイデアもあるため、部門ごとに一斉に顔を合わせる日を設けつつ、個々の事情を加味して働ける制度を継続していく方針です。 多様性という観点では、かねてから国内事業所での女性管理職比率の低さが指摘されてきました。国内の女性従業員の母数が少ない現状があり、対策が必要と認識しておりますが、先だって2023年6月に、初めて女性を社外取締役として登用しました。それを皮切りに女性のさらなる活躍を喚起し、従業員のウェルビーイングに配慮した働き方改革を推し進め、より多様で厚みのある企業基盤の確立を目指します。

 

副社長:アフター・コロナに移行したことで、以前のように取引先や工場を訪問してFace to Faceで対話し、当事者意識を持って課題を吸い上げられるようになりました。我々が製造業として重んじている現場主義の実践に徹することで、できる限り自らの五感でリアルかつ機敏に現状やその問題点を把握し、経営層としてより良い事業活動へとつなげていきます。そして、お客様を含めたサプライチェーン全体のサステナブルな未来の実現に貢献してまいります。

 

社長:より良い世の中の実現に寄与するフィルタビジネスにはいま、近年重視されるESGの視点で追い風が吹いていると実感しています。しかし、そこで慢心するようでは企業としての持続的な発展は見込めません。当社の原点であり、いまなお会社の拠り所となっている「仕濾過事」を命題に、社会のためになる企業であり続けられるよう邁進し、新たな時代を切り拓いていく所存です。